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最近の賃貸事情

Vol.44(2012/04/29) 老朽化家屋問題
街を歩いていると、ところどころに老朽化した建物が存在し、中には長い間誰も住んでいない古い家が放置されているものもありますが、このような空き家が今、問題視されています。

 長期間メンテナンスされていない古い建物は地震による崩壊や景観の悪化、悪臭の原因になるなど防災や防犯面の問題が指摘されており、各自治体は対策を迫られています。実際、老朽化した建物の外壁が崩れて歩道に落下するなどの事故も起こっています。 空き家問題は人口の減少が深刻な地方の問題として位置づけられていましたが、首都圏でも若い世帯は新しい住宅を取得し、狭くて古い家には戻らずにそのまま放置しているケースが増えています。

 東京都足立区や埼玉県所沢市、千葉県柏市では老朽化した建物の所有者に修繕や解体を求める条例を制定しました。崩壊などの恐れがある建物を特定し、特に危険度が高いものに対しては登記簿の確認や周辺住民へ聞き込みを行って所有者を割り出しています。建物の修繕や樹木の伐採などを求めるわけですが、解体を要請することもあります。 この条例の問題点は罰則規定を設けることが難しいため強制力に欠けることで、現時点では対応しない所有者を公表するに留まります。また、修理解体の費用負担や、住宅を解体撤去すると土地の固定資産税や都市計画税が上がってしまうことも課題となっています。住宅が建っている場合は住宅用地の軽減措置が受けられ、200u以下であれば固定資産税は1/6、都市計画税は1/3になります。住宅を解体撤去すれば建物の固定資産税等はなくなりますが、元々老朽化住宅は建物評価額が低いので、土地の固定資産税が上がった分と差し引きしても、結果として税負担が大きくなってしまいます。足立区では解体した場合に所有者へ最大100万円の助成が既に決定していますが、このような自治体が増えることを期待します。

 日本の住宅の平均寿命は概ね40年前後といわれており、アメリカは100年前後、イギリスはさらに長いという状況があります。日本の住宅寿命が短い原因は生活様式の変化や住宅設備の向上などが挙げられますが、建物の価値観や国民性にも起因していると思います。しかし、定期的なメンテナンスとリフォームを行うことで日本の住宅の寿命を長くすることは可能です。

 もともと一戸建ては住宅業界で潜在的な需要があります。別表は国土交通省の調査資料ですが、一戸建てに住みたいという要望は大変多く、賃貸市場でも一戸建ての需要はかなり高いのです。

 大手ハウスメーカーでは一戸建てや二世帯住宅の使われていない一世帯分をリフォームして賃貸利用する提案をしているようです。用途はファミリー向け、シェアハウス、ギャラリーや教室等様々で、一戸建て住宅の賃貸化とシェアハウス化が促進されています。

 建物は単に古いという理由だけで解体するのではなく再生も考える必要があります。危険度が高いものは解体、改修して使用できるものや価値のあるものは耐震性を強化した上で市場に出せば需要と供給のバランスが取れ、地域社会にもメリットがあります。 今あるものを有効活用し、官民が一体となって、地域と連携をとりながら進めることが大切と考えます。

 

Vol.43(2011/01/27) 賃貸住宅管理業者の登録制度

 昨年12月施行された「賃貸住宅管理業者の登録制度」についてお話しします。
  不動産会社を規制する法律には「不動産取引仲介のための宅地建物取引業法」「分譲マンションを管理するためのマンション管理の適正化の推進に関する法律」などがあります。今回施行されたのは従来規制対象ではなかった賃貸住宅管理業者のための登録制度です。賃貸住宅は住宅ストックの1/4以上(約1,340万戸)を占め、その大半は個人所有です。そしてその約8割の所有者が管理会社に委託していると言われています。つまり、賃貸アパートやマンションの多くが管理会社という事業者によって管理運営されているのです。敷金の返還や滞納者の対応など、賃貸物件にまつわる問題が増えている状況を踏まえ、トラブルを減少させる目的で管理会社の業務に一定の規則を定めたのが「賃貸住宅管理業者登録制度」です。

  本制度の対象は「管理事務」を業としている場合であり、「賃貸人から委託を受けて管理する場合」と「賃貸住宅を転貸するサブリース業者」、さらに「毎月の家賃を代行して集金し保証している保証人代行会社」も含まれます。所有者が直接管理を行なう場合と、建物や設備の保守・点検業務のみの場合は対象外となります。また、居住用が前提となり、事務所ビルや駐車場、店舗併用住宅の店舗部分については対象外です。

  本制度に登録した業者に課される義務は下図のとおりです。

  また、国土交通省へ年1度の報告義務もあります。具体的には管理受託の契約件数、棟数と戸数、サブリース(転貸借)の契約件数や棟数と戸数、年間の受託金額(管理報酬)、財産(預かり金)の分別管理等の状況などです。これらは国土交通省が適切に把握するほか、閲覧可能とすることにより取引関係者が管理業者を適切に選択・判断できるようにするためのもので、登録業者の経営規模や経営状況の審査が目的ではありません。あくまで賃貸人や賃借人が賃貸住宅や管理会社選択の参考にするのが目的で、国交省が特定の管理方法を求めるものではありません。その他、入金家賃を賃貸人ごとに勘定を明確に区分して管理しているか、預かった家賃を賃貸人に送金されるまで適切に分別して管理されているかを記載する必要があります。貸主ごとに専用口座を設けたり送金額を報告する必要はありません。

  全体的には昨今の賃借人保護の流れを前提にした内容と言えますが、12月の申請分が登録されるのは4月以降の予定であり、実際に運用されるまでは不明瞭な部分が多々残ります。また本制度は任意の登録制度であり、登録するかどうかは各管理会社の判断に委ねられ、登録しなくても管理業務を営むことは可能です。賃貸住宅の管理に関しては現在特段の法規制がないことや事業者の負担に配慮した結果、任意の登録という制度となりました。登録が特別の保証を与えるものではありませんが、「業務及び財産の分別管理等の状況」が公表されることにより事業者の信用が問われることになります。

  今後、賃貸住宅市場の供給過剰に伴って競争がますます激化し、必然的に質の良い賃貸管理が求められます。「賃貸住宅管理業者登録制度」の開設は、オーナー様にとっては管理会社選びの際の参考にすることができ、部屋を探す消費者にとっては管理会社を選別した上で賃貸物件を選ぶ際の目安になることが期待されています。

【賃貸住宅管理業務処理準則(抜粋)】
●賃貸オーナーおよび借主に対する管理内容についての重要事項説明と書面交付
●賃貸借契約更新時の書面交付
●賃貸借終了時の敷金精算額についての書面交付(原状回復費用の算定基準や金額の内訳などを書面で交付する必要があります)
●工事代などの金銭を借主から受領したときの賃貸オーナーに対する通知
●賃貸人への管理事務に関する定期報告


Vol.42(2011/10/28) 更新料の有効判決と原状回復のガイドライン改訂について

 今年7月に最高裁で出された「更新料の有効判決」と8月に国土交通省から出された「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の再改訂についてお話します。

 まずは更新料の有効判決ですが、貸主側の主張を100%認めた判決となり、4人の裁判官全員一致で有効となりました。今回の判決は大阪高裁で判断が分かれた3件の訴訟(うち2件は無効、1件は有効)についてのものですが、更新料を扱った最高裁の判例として実務に与える影響は大きいと思われます。

 判決のポイントは2つ。1つ目は更新料も貸主の収益の一部であり、賃料の補充・前払い・賃貸借を継続するための対価と解せられ、更新料を徴収することの合理性・妥当性が認められたこと。2つ目は更新料が契約書に記載されていれば更新料が特段に高額すぎる場合でない限り消費者契約法10条の信義則違反は認められず、更新料条項は無効にはならないこと。高額の基準はというと、今回の案件では賃料45,000円で更新料が毎年10万円など、すべて消費者契約法には違反しないとされました。少なくとも関東で慣行とされている2年に1度、1ヶ月分程度の更新料は徴収しても消費者契約法違反になることはありません。

 最高裁は「更新料条項が賃貸借契約書に記載され、貸主と借主との間に更新料の支払いに関する明確な合意が成立している場合」を前提としています。従って今後の対応としては、更新料があることを明確にして募集を行い、重要事項説明書にも明確に記載することが必要です。また、裁判官は、借主は賃貸物件を総合的に検討・選択できる状態にあり、貸主と借主の情報量に大きな差はないと指摘しています。

 更新料有効判決や2件の敷引き有効判決で胸を撫で下ろしたオーナー様も多いと思いますが、需要と供給の問題があります。全国の民間賃貸住宅は1,200万戸を超え、2010年の空室率は全国で23.07%、東京でも16.05%と高水準にあります(全国賃貸住宅新聞社調べ)。一部の人気物件を除いては借り手が優位な状況であることは否めません。将来的に更新料を徴収できるかどうかは不確定です。その他、礼金や共益費、ルームクリーニング代なども問題提起されていくと考えられます。

 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」再改訂については柱が2つあります。1つ目は賃貸借契約書に添付する別表の追加。別表には「工事負担の分担表」や「工事の目安単価」などが盛込まれています。2つ目は「残存価値割合の変更」。償却期間(6年〜8年)経過後、今までは残存価値10%の請求は認められていましたが、改訂により残存価値1円まで償却されることになり、修繕費を借主に負担させることがより難しくなっています。しかし、借主は善良なる管理者として注意を払って使用する義務を負っています。綺麗に使用した借主と悪質な使い方をした借主との工事負担の割合が同じというのは理不尽さが残ります。また、仕様や設備の品質は向上しているにも拘らず償却期間が6年〜8年と変わらないのは不自然という意見もあります。

 ガイドラインは法的な強制力はありませんが、原状回復の考え方の指針になっているため、これを基準に借主の工事負担の範囲を決めなければなりません。貸主及び借主双方が納得するような基準と制度を考える必要がありそうです。



Vol.41(2011/07/30) 震災後の住宅

 震災後の地価の動向。今年の1月1日と4月1日の比較(国土交通省調べ)では地価が上昇した地区は全146地区中2区のみで、前回調査16地区の上昇から減少しており、下落地区は前回の77地区から98地区に増加しています。震災の影響で住宅需要が低迷し土地取引が減少したためですが、ゴールデンウィーク以降は需要が高まってきており、まもなく落ち込みは一段落すると見られています。購入者意欲が低下している理由は、津波で家が流され、瓦礫の山となった映像がニュースで放送され、多額のローンを組んで購入するリスクの大きさをあらためて思い知らされたためと言われています。しばらくは賃貸派が増える傾向が続くのではないでしょうか。

  次に住まいの安全意識についての業界アンケートの結果です。「安全・安心に住まうことに対して意識が高まった」が9割を占めます。そのトップは「耐震性能などの建物構造」の91%、次に「防災対策(防災設備や簡易トイレ設置など)」で56%でした。1981年6月に耐震基準が法改正されて、それ以前の物件と比べると耐震性能が大きく変化しました。賃貸住宅においても築年数が古い物件の耐震補強や改修工事など耐震対策を考える方が増加しています。また、アパートよりマンション、木造より鉄骨、鉄骨よりRC造、また、1階が広いスペース(店舗や駐車場)になっていない物件などを優先して選ぶ傾向は強くなっています。

  その他、高層マンションは揺れが大きい、停電時のエレベーター停止、避難に時間がかかる、断水になれば復旧に時間がかかるなど震災後はやや人気に陰りが見え始めています。埋立地など液状化現象のリスクが高い地域や津波の影響を受けやすい海岸地域の人気も下降しており、徒歩での帰宅が困難な郊外物件も需要が下がり気味です。逆に地盤が安定している西多摩地区の八王子や調布などは住宅の販売戸数が伸びています。

  被災したことを想定して家族や親族に近いエリアを選ぶ方もあります。震災後の引越理由で「実家に戻る」「国に帰る」このふたつはとても増えました。しかし現実は仕事の関係で引越しできなかった方も多いようですが…。都心部や職場から自転車か徒歩で帰れる地域の人気も高まりそうです。近隣に避難所となる学校や公民館などがあるか調べる方も増えました。立地に関しては動かせない事実ですが、今後の不動産市場は立地選別がより厳しくなると予想されます。

  地震による停電や電力不足の影響を受け、LEDや太陽光発電がかなりの注目を浴びるようになりました。太陽光発電については2002年度の発電量は20万kW弱、2008年度は20万kW強とほとんど変化はありませんでしたが、2009年度は補助金などの効果もあり60万kW強と大幅増となっています。需要が増えることで設置費用の単価も下がり、また、電気の買取制度もあるため導入しやすくなります。節電のため電球をLEDに変える方が増えていますが、太陽光発電はまだまだ設置費用が高価であるため導入に足踏みをしている方も多いようです。

  共用部の電気代に充当、貸室の電気代を軽減、非常時に電気を供給できるなど、今後、太陽光発電及び蓄電は賃貸経営という観点から見た場合、他物件との差別化という意味でより注目されるようになっていくと考えられます。